『君の名は。』聖地巡礼に苦情多数!製作委員会が異例の通達


映画『君の名は。』公式サイト

2016年9月9日、『「君の名は。」製作委員会』から、ファンの聖地巡礼に対して異例の通達が発せられた。聖地巡礼をするならマナーを守れ、というのがその趣旨だ。

『君の名は。』は、8月26日の公開以来話題沸騰中のアニメ映画である。岐阜県の飛騨(ひだ)地方に住む女子高生がヒロイン。作中で重要な場所として描かれている飛騨へ、聖地巡礼と称して多数のファンが実際に訪れている。そのせいで、”聖地”周辺の住民から多数の苦情が寄せられているというのだ。

小説や映画の舞台を実際に訪れるというのは、その行為が冗談めかして聖地巡礼と呼ばれるようになるずっと前から一般的であった。たとえば和歌に詠まれる有名な場所を表す歌枕(うたまくら)という言葉があるが、この歌枕を実際に訪ねる旅には根強い人気がある。しかし、『君の名は。』の聖地巡礼のように苦情が殺到することはなかった。

連絡手段がなかったということも考えられる。SNSもスマホも普及していなかった。しかし、地元の人がよそからの訪問者を苦痛に感じたとすれば、口頭で、もしくは実力に訴えて抵抗することは可能だったであろう。もしそれをしていれば、その場所を訪れる人も減って地域もさびれ、現在まで観光地として存在し続けることはなかったはずだ。

つまり、ITの発達とは別のところにポイントがある。『「君の名は。」製作委員会』が発表した文章中の、次の一節を見てみよう。

近隣の方々より騒音や早朝深夜の訪問に関する苦情を多数いただきました。

早朝深夜の訪問、とある。ハメハメハ女王でなくとも、朝の早い時間帯や夜遅くには大抵の人は寝ている。もちろん、夜中に働いている人もいるが、それは社会的な理由によるものであり、人間という動物の生理としてはやはり暗くなったら眠くなるようにできている。そして、寝ているときは誰だって静かにしてほしいものだ。

苦情を受けてしまう聖地巡礼者たちは、周辺住民の暮らしにまでは思いが至らなかったのかもしれない。ゆっくり安心して眠りたい。こんな最低限の願いさえ踏みにじられた人々は一体どんな感情を抱くのだろうか……他人の気持ちに対する想像力を、かつての旅行者と同じ程度でいいので発揮できていたら、巡礼者たちの崇敬する『君の名は。』の名を汚すような事態にはならなかったであろう。

 

画像:「映画『君の名は。』公式サイト」
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