土佐銘菓『かんざし』おいしさの決め手は銀紙

高知県の名物といえば何を思い浮かべるだろうか。ゆるキャラ「カツオ人間」が作られるほどカツオは有名だが、今回はスイーツ枠ということで土佐銘菓『かんざし』を紹介しよう。高知市の株式会社浜幸が製造・販売する『かんざし』は、日本で初めて開発された銀紙焼き菓子である。

柔らかい饅頭生地を銀紙で包み、その銀紙ごと焼くという製法だ。これだけ聞くと簡単そうだが、具体的なプロセスを想像してみると困難さが浮き彫りになってくる。焼く前の生地はドロっとしているので包みにくい。無理に包もうとすると薄い銀紙が破れてしまう。やっとの思いで包んだとしても、まだ固まっていないので形が崩れてしまう……

そこまでしてなぜ銀紙での包み焼きにこだわったのか。浜幸の浜田幸広社長によると、石焼き芋の石の役割を銀紙が担っているという。言われてみれば、このホクホク感は確かに焼き芋に通じるところがある。単なる焼き饅頭とも蒸し饅頭とも異なる、独特のソフトな食感だ。舌触りが良く、しっとりした甘みが口の中に広がっていく。この味わいを引き出すための苦労だったのだ。

味以外にも重要なポイントがある。表面にあしらわれたかんざし模様だ。一見何の変哲もない絵だが、思い出して欲しい、銀紙に包まれていたことを。普通の饅頭のような焼き印は使えない。まさか銀紙の上から焼き印を押すわけではあるまい。この絵は一体どうやって描かれているのか。詳細は述べられないが、特許を取得した特殊な技術が用いられているのだ。

絵もかんざしなら名前もかんざし。ここで根本的な疑問に立ち戻る。なぜ、かんざしなのか。高知県に古くから伝わる民謡「よさこい節」に謎を解く鍵がある。以下、歌詞の一部を引用した。

土佐の高知の 播磨屋(はりまや)橋で 坊さんかんざし 買うを見た ヨサコイ ヨサコイ

坊さんとは仏教の僧侶であり、頭を剃髪している。つまり、髪の毛がない。にもかかわらず髪を結う道具であるかんざしを購入したというのだ。現代で言えば、男性である筆者がブラジャーを買うようなもの。そんな奇妙な光景を目にした人々が、面白おかしくはやしたてたとしても不思議ではない。種明かしをすると、筆者と異なり色男の僧侶は愛する女性のために買ったらしい。

背景にある純愛物語に思いを馳せると、またひときわおいしく感じられる。銀紙包み焼き製法のため、賞味期限は1ヶ月弱とかなり日持ちがする。贈答用にはうってつけだ。自分のためではなく誰かのために、あなたも土佐銘菓『かんざし』をプレゼントしてみてはいかがだろうか。

画像:筆者撮影

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